「このままじゃ、家族ごと潰れる――」
20代後半。
私の人生は、父親の会社の倒産によって突然、底が抜けた。
当時、家庭を持ち、子どもも生まれたばかりだった。
そんなタイミングで、父の会社が経営破綻。
「このタイミングで……まるで絵に描いたような人生の崩壊だ」
悔しさよりも、焦りと不安しかなかった。
毎日のように電話が鳴り、家族の前でもお構いなしに債権者からの催促。
頼るべき親戚からも見放された。
逃げ出したかった。
でも、逃げるわけにはいかなかった。
子どもを、家族を守らなきゃいけない。
それだけは、どんなに追い詰められても、心の奥で灯っていた。
手元に残った現金は、ほんの数万円。
生活費を稼ぐために、日雇いの仕事に出たり、
危険な現場で無理をして働く日々。
それでも、未来は見えなかった。
そんなある日。
街中を走っていた軽トラックの荷台に、山積みになった鉄屑が目に入った。
「あれ……売れるのか?」
好奇心からネットで調べてみると、地元・八戸には金属スクラップを買い取ってくれる業者があるという。
それを知った私は、思い切って、ある業者に電話をかけてみた。
「すみません……鉄って、買い取ってもらえるんですか?」
受話器越しの声が震えていた。
たぶん、あのときの私は、人生でいちばん自信がなかった。
電話に出たのは事務員の女性らしき声。
緊張しながら問いかける私に、少し不審そうな口調で次々と質問が返ってきた。
「どんな鉄ですか?」
「量はどのくらいありますか?」
「どんな車両で持ち込まれますか?」
……なにも答えられなかった。
私はまだ何も持っていなかったのだ。
何キロあるかも、どんな種類なのかも分からない。
ただ、鉄は売れるらしい、という情報だけが頼りだった。
頭が真っ白になって、パニックになった私は、情けない気持ちでその電話を途中で切ってしまった。
けれど、その日わかったことが、すべての始まりだった。
鉄は、売れる。
それなら、やってみるしかない。
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