第1話
倒産、そして借金――“金属屋の社長”の始まり

「このままじゃ、家族ごと潰れる――」

20代後半。
私の人生は、父親の会社の倒産によって突然、底が抜けた。

当時、家庭を持ち、子どもも生まれたばかりだった。
そんなタイミングで、父の会社が経営破綻。

「このタイミングで……まるで絵に描いたような人生の崩壊だ」

悔しさよりも、焦りと不安しかなかった。
毎日のように電話が鳴り、家族の前でもお構いなしに債権者からの催促。
頼るべき親戚からも見放された。

逃げ出したかった。
でも、逃げるわけにはいかなかった。
子どもを、家族を守らなきゃいけない。
それだけは、どんなに追い詰められても、心の奥で灯っていた。

何もなかった。けれど、動かなければ何も変わらない。

手元に残った現金は、ほんの数万円。
生活費を稼ぐために、日雇いの仕事に出たり、
危険な現場で無理をして働く日々。
それでも、未来は見えなかった。

そんなある日。
街中を走っていた軽トラックの荷台に、山積みになった鉄屑が目に入った。

「あれ……売れるのか?」

好奇心からネットで調べてみると、地元・八戸には金属スクラップを買い取ってくれる業者があるという。

それを知った私は、思い切って、ある業者に電話をかけてみた。

「すみません……鉄って、買い取ってもらえるんですか?」

受話器越しの声が震えていた。
たぶん、あのときの私は、人生でいちばん自信がなかった。

電話に出たのは事務員の女性らしき声。
緊張しながら問いかける私に、少し不審そうな口調で次々と質問が返ってきた。

「どんな鉄ですか?」
「量はどのくらいありますか?」
「どんな車両で持ち込まれますか?」

……なにも答えられなかった。
私はまだ何も持っていなかったのだ。
何キロあるかも、どんな種類なのかも分からない。
ただ、鉄は売れるらしい、という情報だけが頼りだった。

頭が真っ白になって、パニックになった私は、情けない気持ちでその電話を途中で切ってしまった。

けれど、その日わかったことが、すべての始まりだった。

鉄は、売れる。
それなら、やってみるしかない。