相変わらず固定客がいるわけでもなく、
その日も軽トラックで当てもなく走っていた。
「今日はどこかに鉄は落ちてないか…」
そんなことを考えながら走っていると、突然、ガラケーが震えた。
「もしもし、○○電気ですけど。」
あ!!1週間ほど前に名刺を渡したお客さんだった。
名刺を見て電話をくれた初めてのお客さんだ。
「スクラップがあるから見に来てほしい」
そう言われ、胸が騒いだ。
すぐに軽トラを走らせて向かった。
現場に着くと、視界に飛び込んできたのは――
美しく光り輝く金属の板が、まるで鏡のように並んでいた。
「これは…?」
お客さんが言った。
「銅の屋根なんだけど、持っていける?」
「…………ん? 銅?」
鉄は知っている。
アルミもなんとなく分かる。
でも“銅”は完全に未知の金属だった。
銅の価値がわからない、
お客さんの表情からうかがい知れるのはたった一つだ・・
鉄よりは高い・・絶対に高い!
頭の中が真っ白になった。
適当な値段を言うわけにもいかない。
「ちょっと待ってください! 値段を出してみます!」
私は軽トラに駆け戻り、震える手で携帯を取り出した。
スクラップ相場のサイトを開く。
その瞬間――
目を疑った。
「……え? 鉄の20倍…?」
銅の相場は、鉄の比ではなかった。
むしろ“別世界の金属”だった。
改めて現場を見る。
並んでいる銅板は、少なく見積もっても数百キロ。
買取に必要な金額を考えた瞬間、背中に冷たい汗が流れた。
ぜんっぜん足りない。
今の私の軍資金では、とても買える量じゃなかった。
「どうしよう…」
喉がカラカラに乾いていく。
適当な理由をつけて断るか?
いや、それをしたら二度とチャンスは来ない。
家族の顔が頭に浮かんだ。
よし――正直に話そう。
私は腹を決めて、お客さんの前に立った。
「ごめんなさい。
正直に言います。
私は今、そんな大金を持っていません。
この場ですぐにお支払いはできません。」
一瞬、お客さんは驚いたように目を見開いた。
だけど私は続けた。
「ですが…
この銅を売れば必ずお金に変えられます。
売ってお金を持って戻りますので、
もしよければ――私に売っていただけませんか?」
心臓が破裂しそうだった。
断られるかもしれない。
怒られるかもしれない。
“信用のない若造”だと思われて終わりかもしれない。
それでも、言うしかなかった。